親が亡くなり、地方の実家を相続した。
でも、自分にはすでに家があり、兄弟も実家に戻る予定はない。
家の中には、親が使っていた家具や家電、食器、衣類が残ったまま。仕事があるので頻繁には帰れず、たまに様子を見に行く程度になっている。
「誰も住まないなら、そろそろ売った方がいいのでは」
そう思って調べ始めたものの、相続登記、片付け、税金、不動産会社、仲介、買取……と分からないことばかり。
「結局、何から始めればいい?」
この記事では、「相続した実家に誰も住む予定がなく、売却を考え始めた人」に向けて、最初に確認することから売却方法まで順番に解説します。
相続した実家を売りたい。まず何から始める?
いきなり不動産会社を決めたり、実家を空っぽにしたりする必要はありません。
まず確認したいのは、「実家を誰が相続するのか」「現在の登記名義は誰なのか」「兄弟・姉妹も売却に納得しているのか」という点です。
特に注意したいのが相続登記です。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った場合、原則として、その日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。詳しくは法務省「相続登記の申請義務化について」で確認できます。
「父の名義のままだけど、売るときに考えればいい」と後回しにせず、まず現在の名義を確認しておきましょう。
兄弟など複数の相続人がいる場合も、売却先を探す前に、誰が実家を取得するのかなどを整理しておくことが大切です。
相続した実家を売却するまでの基本的な流れ
① 相続人と実家の名義を確認する
まず、誰が相続人なのか、現在の登記名義が誰になっているのかを確認します。
② 家族で実家をどうするか話し合う
自分も兄弟も住まないのであれば、「売却する」「しばらく所有する」など、今後について話し合います。
③ 必要な相続登記を進める
実家を誰が取得するのか決まったら、状況に応じて相続登記を進めます。
④ 実家を売る方法を調べる
不動産会社に買主を探してもらう「仲介」のほか、不動産会社などに直接買い取ってもらう「買取」という方法もあります。
⑤ 実家の状態や売却条件を確認して判断する
「まだ本当に売るか決めていない」という段階でも構いません。まず売却方法や実家の価格の目安を知り、その情報をもとに家族で判断する方法もあります。
相続した実家を売ろうとして、最初にやってしまいやすい5つのこと
実家の売却は、人生で何度も経験するものではありません。初めてだからこそ、「先に確認しておけばよかった」となりやすいポイントがあります。
1.実家の物をいきなり全部捨てる
久しぶりに実家へ帰ると、家具、家電、衣類、食器、本など、親が残した物が大量にある。「家を売るなら、まず全部片付けないと」と思うかもしれません。
しかし、残っている家財をどうする必要があるかは、売却方法や依頼先によって異なります。
まず重要書類、貴重品、思い出の品などを家族で確認し、そのうえで残った物をどうするか考えましょう。特に、昔の不動産売買契約書などが出てきた場合は、すぐに捨てないようにしてください。税金の計算で取得費を確認する資料になる可能性があります。
2.兄弟と話す前に、一人で売却を進める
「どうせ誰も住まないから」と、自分だけで不動産会社を探し始めるのも避けたいところです。
兄弟・姉妹など複数の相続人がいる場合、誰が実家を取得するのかなどによって必要な手続きも変わります。
まずは相続関係を確認し、「この実家を今後どうするか」を家族で共有してから、具体的な売却へ進みましょう。
3.相続登記を後回しにする
誰も住んでいない実家だと、名義変更も急がなくていいように感じるかもしれません。しかし、現在は相続登記が義務化されています。
まず現在の登記名義を確認し、自分たちだけでは分からない場合には、法務局や司法書士などに確認する方法もあります。
4.査定額だけを見て売却先を決める
例えば、ある会社から1,000万円、別の会社から1,200万円という査定額が出たら、「1,200万円の会社に頼んだ方が得だ」と思ってしまうかもしれません。
しかし、査定額だけを見て決めるのではなく、なぜその金額になったのか、仲介なのか買取なのか、どのような費用や条件があるのかまで確認することが大切です。
5.売るか迷ったまま、何もしない
親が暮らしていた家なので、簡単には手放せない。「また今度考えよう」と思っているうちに、何か月も経ってしまうこともあります。
すぐに「売る」と決断する必要はありません。
名義を確認する → 家族と話す → 実家の状態を確認する → 売却するとしたらどんな方法があるのか調べる
ここまで進めてみましょう。「売るために調べる」のではなく、「売るかどうか判断するために調べる」と考えると動きやすくなります。
親の荷物が残っている。全部片付けてから売る?
仕事をしながら、週末のたびに地方の実家へ帰って片付ける。考えただけでも大変です。
だからこそ、「家を売る=最初に自分で家を空っぽにしなければならない」と最初から決めつけない方がいいでしょう。
残置物をどう扱うかは依頼先や売却方法によって異なります。まず実家の状態を確認してもらい、荷物をどうする必要があるのか確認してから片付けを進める方法もあります。
一方、重要書類や貴重品、家族にとって大切な物については、処分する前に確認しておきましょう。
古い実家なら「仲介」と「買取」の違いを知っておく
ここまで整理できたら、次に知っておきたいのが実家をどう売るかです。
仲介では、不動産会社に買主を探してもらいます。一方、買取では、不動産会社などが物件を直接買い取ります。
どちらか一方が必ず優れているわけではありません。
ただ、「築年数がかなり経っている」「長期間空き家になっている」「仕事があり、何度も遠方の実家へ行くのが難しい」といった事情があるなら、仲介だけでなく「買取」という売却方法も知ったうえで比較すると、自分の実家に合った方法を考えやすくなります。
「古い実家でも買取できる?」「荷物が残っていたらどうなる?」「仲介と比べて何が違う?」
こうした疑問については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 空き家買取とは?売却の流れ・メリット・デメリット・業者選びのポイントを解説
相続した実家を売ると税金はどうなる?
実家を売った金額のすべてに、そのまま税金がかかるわけではありません。
土地や建物を売った場合の譲渡所得は、基本的に売却金額から取得費や譲渡費用、適用できる特別控除などを差し引いて計算します。
相続した実家の場合、取得費は原則として、亡くなった親などがその土地・建物を購入したときの購入代金などをもとに計算します。取得時期についても原則として被相続人から引き継ぎます。
だからこそ、実家を片付けているときに昔の売買契約書などが見つかったら、捨てずに保管しておくことが大切です。
取得費が分からない場合には、売却金額の5%相当額を概算取得費として計算できる仕組みもあります。
相続した空き家なら「3,000万円特別控除」が使えることも
一定の要件を満たした相続空き家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
ただし、「親から実家を相続したら誰でも3,000万円控除される」という制度ではありません。
対象となる家屋や譲渡時期などの要件があります。また、2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり最高2,000万円です。
実際に利用できるかについては国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の要件を確認し、判断が難しい場合は税務署や税理士などに確認してください。
相続した実家を売るか迷ったら、まずここまででいい
親が亡くなった後は、実家以外にもやることがたくさんあります。
「登記しなきゃ」「荷物も片付けなきゃ」「不動産会社も探さなきゃ」「税金も調べなきゃ」と全部を一度に考えれば、手が止まってしまうこともあります。
最初から全部終わらせる必要はありません。
実家の名義を確認する。
兄弟と今後について話す。
重要な書類や貴重品を確認する。
売却する場合にどんな方法があるのか知る。
まずはここまで進めてみましょう。
調べた結果、「やっぱり、しばらく残しておこう」となるかもしれません。
反対に、「誰も住まないし、遠方の実家を管理し続けるのも難しい。それなら売却を具体的に考えよう」となるかもしれません。
大切なのは、何となく空き家のままにするのではなく、売るか残すかを判断するための材料を集めることです。
そして売却を考えることになったら、仲介だけでなく買取も含めて、自分の実家ではどんな売却方法が考えられるのか確認してみましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律・税務上の判断を行うものではありません。相続や税金については、状況に応じて法務局・税務署や司法書士・税理士などの専門家へご確認ください。